キス

電車を降りて、ホームから階段を降りたところで、柱にもたれて抱き合っている高校生カップルに出くわした。わたしが階段を降りてきたとき、彼らはまさにキスをしようとしているところで、恥ずかしくて少し嫌がる彼女に強引にキスをしようとしている彼と目が合ってしまった。彼は恥ずかしがるでもなく、むしろ「羨ましいだろ」とでも言いたそうな目でこっちを見ていた。すぐに彼の目は彼女の顔に隠れて見えなくなった。わたしはなるべく彼らを見ないようにして足早に改札を抜けた。恥ずかしがるべきだと思う。公衆の面前で破廉恥だ。と思うのはなんだか被害妄想めいたものなのだろうか。羨ましくなんてない。ただ、そんなに昔でもない記憶の中の、あの頃のわたし達はこういうふうに見えたのかな、と思ったりした。せめてもっと人から見えないところでしてほしいものだなぁ。